高齢者虐待やDVの現状を知っておこう 

高齢者虐待家庭内暴力(DV)は、ケアの現場でも年々増加傾向にある深刻な社会課題です。

厚生労働省の発表によると、令和4年度には高齢者虐待の通報・相談件数が30,000件を超えました。
そのうち約7割が家庭内で発生しており、加害者の多くは配偶者や子どもなどの親族です。
内容としては、暴力(身体的虐待)だけでなく、食事を与えない、放置するといったネグレクトや、年金を取り上げる経済的虐待など多岐にわたります。

さらに、DVについては高齢者世帯に限らず、全年代で起こり得る問題です。DV被害者が介護を受ける立場である場合、外部との接触が減り、支援の手が届きにくくなる傾向があります。

このような背景をふまえ、介護の現場では「いかに早く気づき、適切な対応をとるか」が問われています。

支援がむずかしいケースでは「連携」が必須 

虐待やDVといった支援がむずかしいケースでは、一つの機関や専門職だけで対応するのは困難です。
複雑な事情が絡むため、さまざまな専門性を持つ職種や機関と「つながる」ことが欠かせません。

ケアマネジャーは、その連携の起点となる存在です。主に以下のような機関と連携して支援体制を整えます。

  • 地域包括支援センター:初期相談や緊急対応、保護の判断などを行う
  • 行政(市町村):保護命令、成年後見制度の活用、生活支援などを調整
  • 医療機関:身体的・精神的な診断とケアを実施
  • 弁護士や法テラス:法的手続きのサポートや権利擁護の相談窓口として機能
  • 警察:DVや身体的暴力があった際の安全確保と事件化対応

このような体制を築くには、日ごろから顔の見える関係づくりが欠かせません。
定期的なカンファレンスや事例検討会により、情報共有を行っておくことで、緊急時にスムーズな対応が可能となります。

実際の事例に学ぶ連携のあり方 

経済的虐待のケース:後見制度を活用して生活再建

80代女性が長男に年金を取り上げられていた事例では、ケアマネジャーが地域包括支援センターと協働し、家庭裁判所を通じて成年後見制度を申し立てました。
法的に後見人が立てられたことで、本人の生活費の管理と支出が保障され、必要な介護サービスの導入も可能となりました。

DVのケース:医療との連携と緊急避難

70代男性が妻から長年のDVを受けていたケースでは、ケアマネジャーが日常的な聞き取りの中から異変に気づき、医師と連携して診断書を取得。行政と警察に相談の上、緊急避難先へ移動し、保護と必要な治療、今後の生活再建までの支援につなげました。
これらの事例に共通するのは、「ケアマネジャーがつなぎ役を担った」という点です。
利用者の小さな異変に気づき、専門機関へつなげることが、命や生活を守る大きな一歩になります。

ケアマネジャーの役割とチーム支援 

ケアマネジャーは介護サービスの調整者であると同時に、利用者の権利擁護者でもあります。
支援がむずかしいケースでは、アセスメント力や関係構築力、調整力が求められます。

特に、主任ケアマネジャーがいる事業所では、地域包括支援センターや医療、法律関係者と円滑なネットワークを築きやすく、迅速かつ継続的な支援につなげやすくなります。

地域資源が不足している場合でも、地域ケア会議での発信などを通じて改善策の提案が可能です。

また、ケアマネジャー自身が孤立しないためにも、事例検討の場やスーパービジョンを通じて、知識と経験を共有することが求められます。1人で抱え込まない環境づくりが、結果的に利用者へのよりよい支援につながります。

一人ではない支援、地域全体で守る仕組みづくりを 

支援がむずかしいケースは、対応する側にも大きなストレスを与えます。そのため、ケアマネジャーが安心して支援に取り組める「地域全体の仕組み」が必要です。

たとえば以下のような取り組みが有効です。

  • 地域包括支援センターによる初期対応と専門家への橋渡し
  • 行政と協働したケース会議や連絡会の開催
  • 医療・福祉・司法を含む多職種合同の研修や情報交換
  • 事業所内でのスーパービジョンや定期的なケース検討会の実施

支援の質を高めるには、「個人ではなくチームで支える」意識が欠かせません。どんなに困難なケースでも、適切な連携と役割分担があれば、本人の生活を守ることができます。


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